2017年4月19日水曜日

海外子どもの遊び事情(屋外編)

日本でも海外でも、子どもが何より楽しいのは、友達と遊ぶ時間。

私の子どもたちが通っている学校は、アムステルダムにあるブリティッシュスクールで、オランダ人の子は少数派、イギリス人も少なく、いろいろな国の子がいます。私の子どもたちの友達はヨーロッパ各国から来た子か、インド人の子が中心。時々日本人の子同士でも遊んでいます。子どもたちのバックグランドがいろいろ違うと、どんなことをして遊ぶのだろう、と興味津々の私は、よく子どもたちに聞きます。

「今日は楽しかった? 何して遊んだの?」

息子たち、小学生男子はこんなことをしてよく遊んでいます。今回は外遊びについて。

おにごっこ

本当に小さいうちから、子どもは追いかけっこが好きですよね。小学生になっても、元気のいい男の子たちはとにかく走り回っています。

子どもたちの流儀は、
「タグ!」
と言って、相手にタッチしたら、おにごっこがはじまる合図。タッチされた子は相手を追いかけなくてはなりません。「一緒に遊ぼう」とうまく話しかけられなくても、何も道具がなくても、どこでも誰でも始められる、最高の遊びかもしれません。

大きくなると、子どもが自分でルールを作ることもできます。9歳の息子くらいの年齢になると、男の子と女の子が一緒に遊ぶことは少なくなってきますが、男の子たちがおにごっこをしているところに、女の子が何人か入ってくる、ということもあるそうです。

みんなが一緒に楽しめるように、
「タッチされた子はみんなおにになって、おにが増えていく。男の子は女の子を、女の子は男の子をつかまえなくてはならない。」
というルールをみんなで決めた、と息子が話してくれました。男の子は男の子ばかりを追いかけるし、女の子がおにになると、誰も捕まえられなくなることが多いから、というのが彼の説明でした。なるほど。

サッカー

どこの公園にもサッカーボールを持った子が来ていて、いつの間にか、知らない子同士でもサッカーが始まります。サッカーは、どこに行っても人気のあるスポーツです。日本の少年野球のような感じで、地域のサッカーチームに入って練習している子もたくさんいます。

私は、日本に住んでいた時、近所の公園で球技が禁止されていたことを思い出しました。東京、ロンドン、アムステルダムを比べたら、東京が一番、子どもがサッカーをやる場所が少ないように感じます。日本は安全な分、制限も多い、ということかもしれません。


近所の小さな公園なのですが、サッカーをする場所があります。

学校の休み時間、男の子はおにごっこかサッカーに分かれて遊んでいるそうで、日本の小学校も似たような光景なのかな、と想像するのですが、どうでしょうか。

男子は外で遊ぶのが一番! とはいえ、暗い、寒い、天気が悪い冬の季節も長いので家の中での遊びも重要です。次回、屋内編を紹介したいと思います。


野口由美子

2017年4月13日木曜日

日本の小学生、ここがうらやましい!

日本の小学生の子どもたちって恵まれているな、と海外で生活して初めて気が付くことがあります。

「日本では、小学校1年生から子どもだけで学校へ行くから、集団登校もあるけれど、親は送り迎えをしないもの。」
日本人以外の人に話すといつもびっくりされます。東京でも大丈夫、なんて言ったら、都市でもそんなに安全なの!? と信じられないようです。


学校の送り迎えは親がするもの

法律で親の義務となっているかどうかは、ヨーロッパでも国によって違うようですが、大人が小学生の送り迎えをするのは当然、と考えられています。私も毎日学校の送り迎えをしています。

働いている親はどうするの、と思われる方もいるかもしれません。学校で行われている朝夕の学童クラブのようなものを利用したり、自分の親に助けてもらったり、シッターを雇ったり、スクールバスやその他の送迎代行のようなサービスを使ったり、いろいろな方法でやりくりしています。


小学生でも自由に遊べない

こういう環境で、私が一番残念に感じていることは、子ども同士で遊ぶ約束をしたり、子どもだけで友達の家や近所の公園へ遊びに行ったりすることができない、ということです。

子どもに「友達と遊びたい」と言われたら、まず、親である私がその友達の親と、コンタクトを取らなくてはならいません。

「うちの子があなたの子どもと遊びたいそうなので、放課後うちに遊びに来ませんか。私が子どもたちを学校から連れて帰ります。」

いつが都合いいのか。誰が普段送り迎えをしているのか。家の場所はどこか。うちまで迎えに来られるか。初めてうちに来る友達だったら、ちゃんと事前に話をしておかないといけません。

お互いの家を時々行き来できる感じになってきたら、確認しておきたいことが追加で出てきます。

普段家の夕食の時間、就寝時間は何時か。 食物アレルギーなどで食べられない物があるか。

小学校1年生から午後3時頃まで学校で授業がある上に、就寝時間の早い子が多いという事情もあって、うちで一緒の夕食を食べていってもらったり、子どもたちの希望があれば泊まっていってもらったり、ということが頻繁になっていきます。子どもの行動範囲が限られている以上、親が動かない限りどうにもなりません。

親の負担もかなりのもの

延々と親同士でメッセージのやり取りをして、スケジュールを調整したり、送り迎えしたりしていると、あっという間に時間が経ってしまいます。

親にしてみたら、正直なところ、かなりの負担ですが、それをこなしたとしても、子どもにとっては、友達と遊びたい時に自由に遊べない、という不満が残ってしまう、と感じています。

私の場合、子ども2人分のスケジュールで動かなくてはならず、うまく遊ぶ約束ができないこともあります。子どもの習い事はやっぱりここでも盛んなので、子どもが遊べる日は限られています。誰が何曜日遊べるのか事前に情報収集して、子どもから遊びたい相手を複数聞き出し、Yesの返事を早くもらえそうな人から手際よく声を掛けて、予定を埋めていかないと、せっかく放課後遊ぼうと思っても遊ぶ相手がいないのです。近所の公園に行けば、約束していなくても友達が何人かいる、という光景もあまりありません。子どもはすごくがっかりします。


子どもにとって安全な環境、他にはない良いところ

確かに日本でも子どもが犠牲となる事件が起きていて、かつてほど安全ではないと言われていますが、日常的に、学校の送り迎えが親の義務となったり、子どもだけでの留守番や外歩きが禁止されたり、ということはまだありません。日本のような安全な国は奇跡的だと思います。

日本はうらやましい、と思いながら、私は今日も携帯電話で親同士のメッセージを乱発しています。他のお母さんに「いつも子どもを友達と遊ばせていて、あなた偉いわよ!」とほめられるくらいなので、どこの親にとっても日本の環境はうらやましいものではないかと思います。


野口由美子

2017年4月6日木曜日

4月から新生活。育休後の不安、誰にでも


初めての育児休暇明け。1年休業した後の職場復帰、もうすぐ1歳になる子どもの保育園。4月になると、私も毎年自分の育休明けの時のことを思い出します。

子どもが保育園など家の外で「社会」生活をスタートさせる時、というは、親にとって忘れられない思い出です。

子ども自身にしてみたら、まだ1歳くらいの時のことなんて、まるで覚えていませんが、長い時間を過ごした保育園で身に付けたことは大きかった、とつくづく思います。

親である私自身にとっても、あの時スタートがあったから、今の自分がある、と思います。私のスタートはあまり立派なものではありませんでしたが。

育休後の職場復帰の体験を記事に書かせていただきました。ご覧いただけるとうれしいです。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
【体験談】やっぱり不安? 育休後、職場復帰はどうだった?

私自身、不安だらけで4月を迎え、初出社日も結局子どもが病気で行けませんでした。昔と同じように自分の思うようには何もできない、職場にも迷惑をかけて、不安は的中! というスタートだったかもしれません。

でも、自分ができないことに目を向けるのではなく、育児休暇中にはなかった仕事での刺激や達成感があったり、仕事が終わってから子どもと過ごす時間が本当に楽しみだったり、今思い返せば、本当はいいことだらけだったなのでは、と思います。

やっぱり不安、両立なんてできそうもない、辞めた方がいいかも。そう思う時は誰でもありますが、子どもは親がいない所でも多くの愛情を受けて大きくなっていきますし、仕事も自分がいなくても何とかなってしまうことが多いものです(無責任に聞こえるかもしれませんが、親業に比べれば)。

子どもの人生も親である自分の人生もまだまだ先は長い、新生活のスタートが実り多いものであってほしいと、4月はいつも祈るような気持ちになります。


野口由美子

2017年3月30日木曜日

お金って何? 子どものお小遣い、我が家の場合

最近、息子は家族の洗濯物をたたむのが日課です。洗濯物を干すこともやりたがります。

「お手伝いを積極的にやるなんて、えらいわね。」
なんて褒めてくださる方もいるかもしれませんが、今我が家ではお手伝いをやった分だけお小遣いをあげているから、という事情を聞いたら、

「お手伝いでお金をあげるなんて。お手伝いはお金のためではなくて、家族のためにするものだと思うけれど。」
ちょっと否定的な感想を持たれるかもしれません。

家族への愛情、という旗印のもと、
家事=タダでやるもの
という考え方は根強いのかもしれません。

どちらかというと否定的に思われる印象がある「お手伝いしたら、お小遣い」制度ですが、我が家ではあえて導入。2年以上経ちました。この制度はお金の教育として機能していると私自身考えるようになりました。お金の機能を丸ごと理解できると思います。


お金の機能1: お金は価値を測るもの

今、息子は1日分の洗濯物をたたむと1ポイントつきます。10ポイント貯まると1ユーロ渡しています。日本の物価に合わせて考えると、お手伝い1回10円程度です。彼にとって100円って結構大切、ということになります。彼なりに、金額が高い、安いを考えるようになり、むやみに物をねだらなくなりました。


お金の機能2: お金は交換の手段

お金を何に使うか、ということを子どもなりに考えるようになりました。最初は手元のコインが増えていくのが楽しかったようで貯めることに熱心でした。でも、ただお金を持っているだけでは意味がないのでは、と本人も気が付きました。
「無駄遣いしたらもったいないでしょ。」
なんて親がわざわざ口出しすることもなく、もし息子が無駄遣いしたら、
「こんなの買わなければよかった。」
という後悔も体験すればいいのでは、と思っていました。結局、息子は日本に一時帰国した時、ポケモンセンターへ行って、自分のお小遣いで好きに買い物して持っていたお金を使い切っていました。うれしそうな顔でした。自分のお小遣いでなかったら、あれも欲しい、これも欲しい、となっていたかもしれません。満足できる買い物、というのはいいのではないかな、と思いました。


お金の機能3: お金は保存できる

今息子は、ポケモンセンターでの買い物も興味がなくなり、ゲーム機のソフトがほしくて、お金をせっせと貯めています。ゲーム機自体もまだ家にないので、ゲーム機を誕生日プレゼントにもらえるように親(私)を説得する作業もまだ残っているのですが、お金を貯めて、自分でソフトを買う! という目標に向かって、意欲的です。


息子のおてつだいポイント表(地道に努力してます)


より良い仕事ができるように

お金の機能とは、なんて経済学の教科書みたいですが、労働の対価としてのお金について、私も考えさせられました。

ある時、息子が全くお手伝いをやらなくなりました。どうも労働意欲がわかないようです。欲しい物がない? そんなことないだろうと思い、私は賃金(お小遣い)水準を見直すことにしました。私のアイディアはボーナス制度でした。
お手伝い1回 1ポイント
はそのままで、
5日間連続でお手伝いすると、ボーナスポイント 5ポイント
を追加しました。

仕事が手早くなって、洗濯物をたたむだけでなく、洗った洗濯物を干すことも手伝えるようになり、両方やれば1日2ポイント。月曜から金曜まで毎日やれば、ボーナスポイントも合わせて1週間15ポイント。1ヶ月で6ユーロお小遣いがもらえます。半年続ければ36ユーロ。半年お手伝いをがんばればゲームのソフトが買える、という計算をした息子は「これならがんばれる」と思ったのか、またお手伝いをやるようになりました。

洗濯物はきれいにたためていないとポイントが認められません。たたんだ洗濯物を人別に重ねてまとめる、タオルが同じ大きさになるようにたたむ、より上手にやろう、もっとできることを増やしたい、と工夫がみられるようになってきました。適切な対価が払われるからこそ労働意欲が高まる、というのは子どもにとっても同じようです。


お金って何だろう? 

とはいえ、いろいろな考え方があるものです。
「お金くれないなら、お手伝いしない。」
なんて子どもが言い出すに決まっている! ということで、お手伝いをするしないとは関係なしに、毎月とか毎週とか、決まった額のお小遣いを渡しているご家庭もありますし、必要な物がある時にその都度相談してお金を渡すという方もいました。

オランダ人の子が、近所の家を回って
「何か家の仕事をさせてください。1回50セントでやります!」
なんていうお小遣いの稼ぎ方もあるそうです。

お金の教育で一番大切なのは、「身の丈に合ったお金の使い方」を知ることだと思います。自分の「稼ぎ」に見合わない浪費をするようでは困りますし、逆にお金を全然使わないで貯蓄しているだけというのも意味がありません。お金を欲しがるばかりでも幸せになれるわけではありません。自分が持っているお金で「足りる」ということを知るのが重要なのではないかと思います。

我が家の制度も子どもの成長に合わせて変えていかなくてはならないだろうし、まだまだ考える余地がありそうです。お小遣い、大切にしたいですね。


野口由美子

2017年3月23日木曜日

気になるけど、仕方がない? 子どもの睡眠時間

ある日、8歳の息子から唐突に
「ママ、ぼく夜は7時に寝てみたい。」
と言われ、ちょっとびっくりしたことがあります。

普段、子どもたちの就寝時間は大体8時半くらい。私は、こんなものか、と思っていたのですが、息子のクラスの子たちと比べるとだいぶ遅い方だったそうです。夜7時くらいに寝る子が多いらしく、自分も他の子たちと同じようにやってみたくなった、ということでした。

息子のクラスメートの多くはヨーロッパ各国の子。日本人の子どもは夜寝るのが遅いという話は聞いたことがありましたが、本当だなぁ、と実感しました。

その時のことを書いた記事を掲載していただきました。ご覧いただけるとうれしいです。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
何時に寝てる? 新生活が始まる前に見直したい、子どもの睡眠

この記事には多くの反響をいただきました。今の生活では就寝時間を早めることは無理、という率直な意見が多かった印象です。

特に目立ったのが、お子さんが保育園に通っている共働きのケース。私自身が日本で子どもを保育園に預けて働いていた時、時短勤務で5時くらいにお迎え、6時に夕食、8時に就寝、というような生活でした。

でも、保育園なら日中のお昼寝がありますし、先生と相談して、お昼寝時間と夜の睡眠時間を調整することで、十分な睡眠時間を確保できると思います。なので、全く心配はいらないはずですが、本当はもっと早く寝かせてあげたい、と思っている方が多いのかもしれません。

それとは別に、そんなに子どもを早く寝かせる必要があるのか、という疑問を投げかける方もいらっしゃいました。5時台に子どもが夕食を食べているような家庭では、親の夕食は子どもが寝た後に、というパターンもあるようです。確かに、もうちょっと時間が遅くなってしまっても、家族そろって食事をした方がいいのではないかな、と私も思います。

いただいたコメント全体を通して強く感じたのは、

大人も子どもも忙しい!!

ということです。休むことを軽視しているわけではないのだけれど、やっぱり後回しになってしまうのかもしれないと思いました。子どもの就寝時間が遅いと、大人の就寝時間はそれ以上に遅くなります。

私自身、休養を十分に取れないと、日常生活が送れなくなるくらい、体調を崩す、ということを経験しているので、休養を重視できるようになったのですが、そんな経験をしなくてもわかることだと思います。なかなか難しいことかもしれませんが、休むこと、睡眠時間を確保することにもう少し積極的になってみてもいいのでは、と思います。


野口由美子






2017年3月16日木曜日

出生率の高い国と低い国。子育て支援策以上に違うこと

先進国ではどこの国でも少子化が進んでいる中、フランスは徹底した家族支援策に乗り出し、出生率が2.01(2014年 世界銀行)まで回復したモデル国。出生率1.45(2015年 厚生労働省 国立社会保障・人口問題研究所)の日本ではそのように紹介されているようです。

日本とフランスの子育て支援策の違いを挙げてもきりがありませんし、所詮日本と違う文化を持つ遠い国の話。学べることもあるだろうけれど、日本がそのままマネできるようなものではありません。そういう気持ちなのですが、ある日、フランス人の友人から言われた日本の会社の話には返す言葉がありませんでした。

「日本で子育てと仕事の両立って基本無理じゃないかと思う。お父さん帰ってこないし。会社に長くいないといけないでしょ? 無理な仕組みになっていると思うんだけれど。」

この方の旦那様は日系企業に勤める日本人男性、かわいい子どもが2人。日本に住んでいた経験もあり、日本の会社をよく知っているので、ごまかしはききません。続けて、日本にいた時疑問に思っていたことを私に言いました。

「なぜ、仕事と子育ての両立が女性だけのハードルになっているの? 男性だって同じはずなのに。フランスだったら、子どもの世話も何だって、女性も男性もやるものだって思う。」

日本はまだまだです、と認めるしかありませんでした。覚悟が違うんだよな、と。

覚悟、というと、女性は男性並みに仕事をし、男性は女性並みに子どもの世話や家事を万能にこなせなくてはならないような、レベルの高いものを想像してしまいますが、そういうことではないのだと思います。フランス人はそんなに働かないですよね。男性も、女性並みに仕事をし(残業なんてもってのほか、長期休暇も当たり前)、女性も、男性並みに家事をする(とにかく時間をかけない)ということなのではないかと思います。

たとえば、家事のこと。私が実際に見てきた範囲でのことですが、美食のフランス人も、美食でもないイギリス人やオランダ人も、ヨーロッパのお母さんは普段の食事に手間をかけていないです。オーブンに入れるだけ、パスタをゆでるだけ、ジャガイモをつぶすだけ。とにかく質素。日本食に置き換えたら、カレーや丼物、一汁一菜の方が立派かも、と思えるような簡単な献立です。

これくらい大胆に開き直ってしまえばいいのか。それとも、やっぱり食事はちゃんと作らなくちゃ、なのか。子育て支援策以上に大きな違いに思います。

日本人お母さんの苦労はまだまだ続きそうな気がします。


参考: (私が書いた記事です。こちらもご覧いただけたらうれしいです。)
ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
保育園入れた? 仕事と子育ての両立って大変? ママの悩みが尽きないのはなぜ


野口由美子

2017年3月10日金曜日

恩返しではなく「恩送り」を。子どもの貧困、支えてもらった私が「人を支えたい」

3月は卒業の季節。子どもの貧困対策センター公益財団法人「あすのば」で活動している学生たちの中にも、卒業という大きな区切りを迎えた人々がいます。

首都圏学生代表として活躍する高原彩さん(18)も高校卒業を迎えました。高原さん自身、あしなが育英会の奨学金を利用して高校に通いながら、あすのばの合宿運営スタッフや、全国キャラバンの学生代表として、積極的に子どもの貧困に関わり活動しています。立派な学生に見えますが、彼女自身、活動を通じて多くのことを学んだそうです。


高原彩さん(出典: あすのば子ども委員会フェイスブックページ


     ◇


「自分はつらいって思っちゃいけないのかな。」自分の気持ちに向き合っていなかった


私は、あしなが育英会の奨学金を借りて高校に通っていました。母と姉と共に、祖母の家にずっと住んでいます。

父が2歳の時に亡くなったので、私自身、父のことは何も覚えていません。写真で見る父の顔しか知らないのです。でも父の写真もだんだん見なくなっていきました。6歳年上の姉は私よりも父との記憶があって、父を思い出して泣いているのを見ることもありました。でも、父のいない生活が当たり前になって、つらいと思わなくてすむように、過去に向き合わないようにしていました。

「子どもの貧困」がテレビや新聞で取り上げられることが増えてきたのですが、そこで取り上げられるのは、小さいころから食べるものにも困っていたり、生活費を稼ぐためにアルバイトを掛け持ちしたり、わたしよりもずっと大変な思いをして生活をしている人ばかり。自分はつらいと思っちゃいけないのかな、と感じていました。


合宿の夜、キャンドルを灯して語られた、ひとりひとり思いを聞いて


高校2年の夏に、あすのば合宿ミーティングに参加しました。貧困家庭の人や支援団体で活動経験がある人など、全国の高校生、大学生世代の人たちが集まりました。合宿では思っていることをそのまま語り合う「シェアのば」というプログラムがあります。初めて自分の境遇について話す人もいました。「さびしい」という自分の気持ちに気づけなかったこと、親に「一緒に死のう」と言われたこと、いろいろな人の生い立ちを分かち合いました。


シェアのば (出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト


夜には、キャンプファイヤーを行う予定でしたが、雨で中止になってしまい、代わりにキャンドルナイトが開かれました。キャンドルを灯して、先輩たちが自分の思いを語り始めました。とても心を突き動かされました。私は自分の過去と向き合おうとしていなかったけれど、いつかは自分も、と強く思いました。この思いがあって、子どもの貧困という問題に積極的に関わって活動するようになりました。


キャンドルナイト(出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト



将来の夢は社会福祉士として人を「支えたい」


将来の夢は、社会福祉士です。困難がある人に寄り添いながら支える仕事をしたいと考えるようになったのは高校3年になってからです。あすのばの活動でお世話になっていた先輩に進路の悩みを打ち明けた時、社会福祉士という資格があることを教えてもらいました。社会福祉士は、高齢者、低所得者、子ども、障害者などさまざまな福祉分野をカバーします。自分がどの分野に特化していきたいのか、広く勉強してから考えたいと思いました。そのためにも、社会福祉に強い大学への進学を希望することにしました。

大学受験は、推薦入試を目指し、学校の勉強をがんばってきました。でも、私が行きたかった大学の指定校推薦は学年で成績1番の子が取るらしいと知って、私には無理だと諦めました。AO入試に切り替えることにして、AO入試の出願をした後、私が指定校推薦枠に入れることがわかりました。とてもうれしかったのですが、指定校推薦を受けるために受験料を再度払わなくてはなりません。受験料は高いので、受験にかかるお金のことを考えるのは、勉強よりもつらかったです。


近くで支えてくれる人がいたから、今の私がある


私自身おばあちゃんと一緒に住むことができて、おばあちゃんが支えてくれたから生活できていると思います。父が亡くなったばかりの時、隣に住んでいた方が遺族年金のことなど、生活に必要な情報を母にいろいろ教えてくれました。母は地域の人たちに支えられて生きてこられたと思います。SNSだけでは作れない、近くにいる人同士のつながりが必要だと思います。近くにいる人が目を向けることで、救われる人がいるということを多くの人に知ってもらいたいです。


あすのばの仲間たちと(出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト

     ◇

周囲に支えられながら大きく成長した高原さんは、今度は自分が支える人になりたいと、新しい道を歩み始めます。恩返し、ではなく、恩送り。彼女が気づいたことは私たちにとっても大切なことではないでしょうか。


野口由美子