2015年10月2日金曜日

母親は時間がなくて当たり前、ではない

「初めての赤ちゃんが生まれると、あなたの生活は完全に変わります。・・・赤ちゃんの世話はとても大変で、自分の時間が全く持てなくなってしまったかのように思えることもあるでしょう。・・・もちろん、だからといって自分が楽しんでいたことを全部あきらめなくてはならないわけではありません。」 
(引用: Growth Guide ages 0-4

生後3ヶ月までに赤ちゃんを人に預けなさい?

最初に紹介した文章はオランダの子供の成長に関するガイドブックに書かれている内容です。私が今住んでいるオランダでは4歳までの子供を持つ親にこのガイドブックが渡されます。健診の時には子供の成長を記録し、子供の成長についての説明や親のためのヒントも載っています。私のようにオランダ語のできない外国人のために、英語版も用意されています。日本の母子手帳のようなものといえます。赤ちゃんの誕生から生後3ヶ月までについて書かれた最初の章に、冒頭で紹介した内容が書かれていました。

行き詰まるママと余裕があるママ

私が実際に初めて赤ちゃんが生まれてからは毎日余裕がなく、自分の時間どころではありませんでした。1人目の子供が産まれた時は、すべてが初めてでよくわからないことの連続です。母乳をあげなくては、よく眠らせなくては、体をきれいにしなくては、とやらなくてはならないことがずっと続き、繰り返されます。そして赤ちゃんはよく泣きました。なぜ泣いているのかわからずおろおろすることも多く、私と赤ちゃん2人っきりの部屋で行き詰まっていたこともありました。

赤ちゃんの世話いくら大変でも、親(特に母親)はそれくらい我慢すべきで、赤ちゃん時代は短いのだから、つらくてもそれが後になればいい思い出になる、と当時の私は思っていました。私が特別というわけではなく、実際に自分がママなのだからがんばらなくてはならない、と自分に言い聞かせ、毎日睡眠不足で休む時間もない生活を送っている方もいると思います。

私は今住んでいるアムステルダム近郊で赤ちゃんを持つお母さんにもよく会いますが、当時の私より余裕がある雰囲気です。赤ちゃんも穏やかで、大泣きするところを想像できず、この赤ちゃんが泣き止まないことなんてあるのかしら、と思ってしまいます。もちろん実際には夜中に泣き止まなくて困ってしまったわ、という話をその方から聞くことになるのですが、その話ぶりからは、そういう日もあるわよね、くらいのおおらかな心持ちが感じられます。

助けてくれる人がいるから行き詰らない

毎日必死で新米ママをやっていた当時の私と、アムステルダムの新米ママの違いはどこにあるのだろう、と最初は不思議に思ったのですが、子供が生まれてからも自分の時間を少しでも持っていることが違うのではないか、という結論に至りました。先に紹介したオランダの母子手帳では、ほんの2、3時間でも自分の時間を持てれば、気力も体力も回復して前向きに育児に取り組める、と自分の時間を持つことの重要性を説いています。

オランダ在住日本人の友人からこんな話を聞きました。彼女は生後1ヶ月の赤ちゃんともうすぐ3歳になる上の子を義理の母に預けて、夫婦で映画を観に行ったそうです。彼女は子供を預けると、外出先で子供のことばかり心配になって楽しめないと思っていたので、今まで子供を預けたことがありませんでした。今回初めて子供を預けて外出することをオランダ人の義理の母に話したら、義理の母は、下の子が生まれてから初めて、という意味だと思ったそうです。まさか上の子が生まれてから3年近くも、子供を預けて夫婦で出かけたことがないとは信じられなかったのです。子供が心配で外出が楽しめないと思っていた彼女もその時のことを楽しそうに私に話していました。子育てに余裕があるというのはこういうことなのだろう、と感じました。

海外で暮らしてみると、毎週子供を預けて夫婦で夜レストランに出かけるというのもめずらしい話ではなく、そういう親のライフスタイルは日本から見ると勝手すぎるように思えるかもしれません。でも、逆にこちらから日本を見てみると、親はこうあるべき、という要求がストイックで厳しすぎるように感じます。親だって、子供のことだけでなく、時には自分が楽しんでもいいんじゃない?、なんて言えないような雰囲気がありませんか。

ひとりでない子育てを始めるには

赤ちゃんの面倒を代わってみてくれる人はいますか。赤ちゃんの世話を他人に頼むことをためらう必要はない、とオランダの母子手帳には書かれていましたが、実際には、自分の赤ちゃんの面倒を頼むのは簡単なことではないかもしれません。それでも、思い切って相談できそうな人が1人くらい、思い当たりませんか。

私だったら、やはり子供の父親である夫が頼みやすいです。私は1度だけですが、夫から自分の時間をプレゼントされたことがありました。子供が生まれて初めての私の誕生日、夫は私を日帰り温泉の前で降ろし、3か月の赤ちゃんとドライブに出かけていきました。車に乗せて赤ちゃんが眠っている間を狙って、私はひとりで温泉に入っていました。当時の私にとって、その時の温泉は何よりの贅沢な時間となりました。今、子供たちはパパが大好きですが、私のこのひとり温泉が父子の時間の始まりだったと思うと、母親が赤ちゃんを預けるということは、母親の私だけでなく家族にとっていい経験だったと思います。


野口由美子

参考:GroeiGids (オランダの育児ガイド)



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